アメリカ在住10年となりました。最初の3年はアメリカ現地企業、それ以降は日系企業の駐在員として働いています。
以前からアメリカで働きたいという目標があり、現在の環境には非常に満足しています。一方、自分で言うのも何ですか、駐在員としての苦労も多いです。
ただ、極論として駐在員を目指すべきか?と後輩らに相談されたら、答えは100%イエスです。
大きな理由は、日本で勤務していては得られないであろう給与額と現地での経験です。
そして場所を選べるのであるのなら、アメリカ、シンガポールあるいはタイが有力です。
今回は、私の実体験であるアメリカ駐在員の気になる懐事情、生活をお話します。
目次
アメリカ駐在員の給与
私の勤務する日系企業は東証上場、従業員1,000名以上、売上100億円以上で、中規模メーカーです。
大企業でも、大手商社でも大手投資銀行でもないので、そもそも国内で得られ給与額自体が高くありません(笑)
私の業務は現地子会社で従業員5名をマネジメントしています。日本人は私のみ。
給与体系は3本柱です。私の年齢は40歳。
ー日本の給与;社会保障の支払いが中心
ーアメリカの現地給与;現地での生活費
-ボーナス;日本円で支給される
会社の規模は小さいですが、アメリカ現地のトップとしの役職が与えられ、大きな責任と結果が求められます。たまに、胃が痛みます。(笑)
日本の給与
基本給から、健康保険料、厚生年金保険などの社会保険料および所得税相当額、住民税相当額などが控除されます。
多くの駐在員の任期は3年以上となるので、引っ越し前に住民票を抜きます。そのため、住民税は発生しないはずですが、給与調整のため住民税相当額の項目で一定額を控除されます。
以上踏まえ、日本の給与の手取りは10万円以下となります。日本で生活している訳ではないのいで、困ることはありません。
アメリカの現地給与
現地で生活するために必要な基本給に加え、海外勤務手当、家賃補助、子女教育費用が支給されます。
そのほか、ハードシップ手当(危険手当)や帯同家族手当などを支給している企業もあります。
手当については、勤務先の社内規定次第ですね。
基本給は、社内で定めている役職や等級により決まります。そこに駐在員の在住先と日本との物価為替調整指数が加味されます。購買力補償方式と言われるものです。
例えば、カリフォルニア在住で物価為替調整指数が140%であれば、日本の基本給×140%×為替レートとなります。
駐在員の給与計算で利用されるデータで有名なのが、コンサル企業のマーサー。
根拠をもとに給与体系は人事部が決めるので、よほどのことがない限り、変更は無理でしょうね。
私の場合、アメリカの現地給与は手当込みで手取り$4,900/月となります。
ボーナスは年2回、日本円で支給されます。私の場合は手取りで約200万円/月です。
以上より、年間手取り額は合計で約860万年($=110円)となります。
アメリカの生活費は、日本より高いです。どこにいってもチップです。例えば、レストランに行けば20%ほどのチップ、ホテルチェックアウト時もチップ、ホテル送迎バスを使ってもチップ。
5年いても、驚くほどの金額は貯まりません。ただし、現地での楽しみ方やお金の賢い使い方はたくさんあります。
アメリカ駐在員の福利厚生
医療保険
生活をする上で重要なのが医療保険。アメリカは医療費が法外なので、保険に加入しないと大変なことになります。
風邪をひいて、病院に行くだけで2万円取られるというのは本当の話しです。
企業からは、海外渡航保険と現地保険の2本が支給されています。海外渡航保険が効かない診療の場合に現地保険を使用しています。
したがって、医療費は自己負担はなし。現地保険を使用した時も、企業の支払いとなっています。
住宅手当
次に、住宅手当です。アメリカの都市部の住宅は驚くほど高いです。カリフォルニアやニューヨークなどの東海岸の2ベッドルームで$3,500/月以上はします。
さすがに、治安の悪い地域には住めませんので、それなりの地域に住むことになります。
住宅費用は、企業より全額支給を受けています。
車
車については、企業から一台リース車が支給されます。仕事で使用する以外にもプライべートで使用可能です。
車種はトヨタカムリー、子供連れの人はバンをリースしている人もいます。
リース車にかかる固定資産税や重量税も会社が負担してくれてます。
もちろん、免許証は現地で自分でとる必要があります。
子女教育費用
子女教育費用は、子供の学校の教育費になります。子供がいる場合、学校に通わせる必要があります。
ニューヨーク、シカゴやカリフォルニアなど日本人が多い州には日本語学校があり、そこに通わせる駐在員も多いです。
中規模の州では土曜日のみ開校している日本語補習校。この場合、平日は現地校に通うことになります。
日本語学校の年間費は100万円以上、日本語補習校は10万円程度です。福利厚生が整っている企業では日本語学校の費用も全額支給しているところがあります。
ただし、大半の企業で、限度額が設定されていると思います。
私の場合は、子供二人いますが、平日は現地小学校で無料。土曜は日本語補習校に通っており、その学費の支給を受けています。
厚生年金
最後に、厚生年金です。私の場合は、日本の厚生年金に加入しています。したがって、アメリカの年金には加入していません。
ただ、大半の駐在員は日本ではなく、アメリカの年金に加入していると思います。
国が提供しているアメリカの年金はソーシャルセキュリティです。受給資格を得るために、10年の加入期間が必要です。
駐在員の派遣期間は3-5年が平均ですので、10年間の支払いは難しい。そうなるとかけすて?という疑問が浮かぶかもしれませんが、安心ください。
日米社会保障協定の発効後はアメリカでの納税が10年に満たなくてもソーシャル・セキュリティー手当の受給資格が得られるようです。
もちろん、満期の支払いに比べて受給額は大きく減るとは思いますが、ないよりはましです。
年金をもらえる年齢になったら、専門家に相談してみてください。
アメリカ駐在員の業務
20代の若い人は、勤務先の企業が提供している海外研修やキャリアアッププランの一環としていく場合があります。
また、マーケディングや開発者として、アメリカと本社日本との架け橋的な役割を担うこともあります。
30代以降になると、現地子会社のマネジメントとなったり、事業拡大の任務を背負って派遣されます。この場合、責任が重い分、給与もそこそこいいはずです。
私の場合は、現地子会社の責任者です。既存事業の維持、事業拡大のための成長戦略、新規事業の発掘など、本社のマネジメントからの指示ならなんでもやります。
アメリカ人と密にコミュニケーションを図り、関係を作り、時にはロジックでねじ伏せ、時には厳しいコメントで業務改善させるなど、かなり神経は使います。
また、訴訟大国であり、都合が悪いとすぐに訴えてきます。中には、根っからの悪人もいますので、要注意です。信頼できる部下、味方がいると、大いに重宝します。
私も何回か目の当たりにしたことがあります。
一方、こんな現地の状況はおかまいなしに、本社側は指示を出してきます。自分ではできないのに、言いたい放題です。日本本社にサポート役を作りましょう。
最初の数年はかなりの労力を使って、自分のポジションを気づくことがポイントです。
正直、アメリカ現地の人も結果をだすのが難しい仕事を、外国人でその国の慣習もほどほどにしか知らない日本の駐在員が、成功を収めるのは並大抵の努力では成しえることはできません。
競合が増えビジネスは難しくなるばかりですが、駐在員の給与体系は昔ほどよくはないと思います。
アメリカ駐在員で得られるもの
現在、アメリカ勤務10年を迎えました。30-40歳にかけての得られたこの経験はかけがえのないものとなっています。
国内市場が縮小する中、海外で稼ぐ必要のある日本企業は、グローバルで働ける人材をますます必要としてくるからです。
駐在員の勤務により得られるスキルは
英語力;ネイティブレベルまで上達させるのは難しいですが、ビジネスレベルまでは問題なくいけます。
マネジメント力;日本人よりマネジメントが難しいです。上下関係に関係なく発言してくるので、いつもロジックで説明できるようにしとく必要があります。部下となるアメリカ人も年上の場合が多いです。私の部下の最年長は60歳です。
数字管理;子会社の運営を任せられるので、売上予算、SGA予算、現地の税金システム、給与体系など理解する必要があります。
営業から経費管理まで、自分でプロセスを作成、改善する必要もでてきます。
人事;社員の福利厚生、社員面接、採用、解雇、ボーナス支給すべてに関わります。訴訟問題も多いので、弁護士とのやり取りも必然的に増えます。
仕事外;子供の教育で英語をマスターさせれれば、将来大きなメリットとなります。また、バケイションはアメリカ国内、欧州、ハワイなど選択肢が広いです。アメリカの銀行を開設したり、余ったお金を投資に回したりと日本より、運用率が良く稼げます。
人脈;日本人のコミュニティに参加することで駐在員ネットワークを形成できます。また、現地人との付き合いにより、日本帰国後もネットワークを生かして業務を行える可能性があります。
以上より、給与は驚くほどもらってはいませんが、駐在員として得られる経験をプラスとして、考えれば会社には感謝でいっぱいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。