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【ウソを見抜く交渉術】会話から本音を引き出す

HOW TO NEGOTIATE WITH A LIAR

会社にもいますよね、平気でウソをつく人。信用できないだけでなく、業務上の弊害となり大変です。

これが交渉の現場となった時は、どのように対応すればいいか、ビジネス書Havard Business Review ONPONTの記事を参考に考えていきたいと思います。

大規模な社会心理学のリサーチでは、人はたびたびウソをつくと指摘しています。一つの顕著な研究では、平均で人は1-2回/日にウソをつくとあります。

交渉の現場も例外ではありません。

1999年から2005年までに実施された研究結果では、交渉を行う人の約半分はモチベーションや機会がある時には、ウソをつくそうです。

彼らは、ウソは優位なポジションを得るためのやり方と考えていますが、実際は反感を生んだり、WIN-WINの関係や創造的な問題解決の邪魔となるのです。

ウソは目に見えないものであるため、交渉者はそれに対する準備を慎重に行い、防止するためのプロセスを踏む必要があります。

多くの人は、ウソを見抜くためのスキルを上達することで、解決できると考えていますが、実際は難しいようです。

メタ分析では、人は、相手がウソをついている時間の54%のみを正しく特定できます。これはコインの裏表を当てる確率よりやや高い数字に過ぎません。

管理された環境下で、ウソを発見するために開発されたウソ発見器は問題が多く、1/3は間違った結果にたどり着くということで、使えません。

面白いことに、人は特にお世辞で覆われているウソを認識する能力が欠けいています。

例えば、下記のような状況です。

チームの模範だと言われる

上司から昇進が目の前だと言われる

取引先から最優先の顧客だと言われる

人は事前に仮定していたことや期待に一致した情報を、迅速に受け入れる傾向にあるのです。確かに、都合のいい情報は聞きやすいですね。

あなたが交渉中に騙されない方法として、ウソを発見するより、むしろ防止することに焦点を充てる必要があります。

相手がウソを作り出すのを困難にさせる状況を生み出す中で、対話を行うことができる科学的に証明された方法があります。

これらの方法は絶対に確実なものではありませんが、交渉中あなたを優位な位置に立たせ、最大限の価値を創造するためのサポートとなります。

ウソを見抜く方法ポイント

✔自分の情報開示を行い相互依存性を高める

✔悲観的な質問により、相手の本音を聞き出す

✔何気ない会話から相手の機密情報を聞き出す

交渉術;相互依存を促す

人は相手の情報開示に報いる傾向が強いです。相手がセンシティブな情報をシェアしてくれた時、私たちの本能は彼らの透明性に合わせようとします。

事実、ただ単に会話する時の方が、それが見知らぬ人であっても、秘密を教えてもらった場合は、相互依存を促すのです。

Alessandro Acquisti氏らは、誤った保険請求や税金申告の不正経験などの非倫理的行動リストを使用し、ニューヨークタイムズの読者に対して、比較調査を行いました。

調査内容;次の質問を吹き込んだ回答者の答えを比較

1)この調査に回答してくれたほとんどの人は、非倫理的行動リストに記載されたことを行ったことがあると認めました

2)この調査に回答してくれた僅かな人が、非倫理的行動リストに記載されたことを行ったことがあると認めました

結果;回答者の1)は2)に比べ27%高い確率で、自分も同じようなことをしたことがあると回答しました。

また、相互依存の作用は、特にface to faceでのやり取りの場合に顕著になります。Arthur Aron氏とConstatine Sedikides氏の調査では、下記のグループを比較しました。

1)ランダムに組まれたペアが、自己開示を引き出すために設定された質問に、答えたグループ

2)ランダムに組まれたペアが、単に少しの会話のみを設定されたグループ

結果として、1)のグループは2)に比べて友人となるケースが高く、結婚したカップルまでいました。

もちろん、親密な関係になるようし向けることが、交渉での主な目標ではありませんが。

ただし、Maurice Schweitzer氏と Rachel Croson氏の研究では、知っている人や、信頼を置いている人に対しては、見知らぬ人に比べ、人がウソをつく可能性が低いとあります。

相互作用を活性化させるたの良い方法は、戦略的な重要性の問題において、秘密を開示することが最初のステップとなります。

そうすれば、相手も同じ分野における情報開示を行ってくる可能性が高いです。

交渉術;的確な質問を投げかける

ほとんどの人は、自分自身を正直者であると考えたいのです。しかし、多くの交渉者は、自分の競合ポジションを弱めるような敏感な情報を、守ろうとします。

他の言葉で言うと、省略によるうそをつくのです。つまり、積極的に虚偽を伝えるわけではありませんが、事実の重要な部分を故意に伝えないことで相手を錯覚させるのです。

例えば、あなたが革新的な商材を販売しています。その商材を使用するには、重要な装置の入れ替えが必要となります。それは、購入者には分かりません。

この場合、あなたは、その情報を開示しないことを非倫理的と感じるかも知れません。しかし、その話題を避ければ、取引が成立し大金が入ってきます。同時にあなたの誠実性も維持できると、考えるかもしれません。

もしも、購入者がその質問をしていたら、私は真実を答えていただろうと、あなたは主張し、すべてを正当化するのです。

Maurice Schweitzer氏と Rachel Croson氏の研究では、交渉時、61%の人は、交渉力を弱めるような情報について質問された時でも、それを打ち明けると説明しています。

同様に、同じ研究で、その情報について質問されても31%の人は最終的にウソをついのたです。ただし、あなたが質問を注意深く行うことで、こういった結果を避けることができます。

Julia Minson氏と Nicole Ruedy氏の研究では、質問者が悲観的な仮定において質問する場合、楽観的なものに比べて、ウソをつく可能性が低くなります。

例えば、

1)悲観的な質問;この商材は新たな装置を必要としますよね?

2)楽観的な質問;装置は正常に作動しますね。

人は事実を否定するよりも、真実でないことに賛同する方が、簡単なようです。

交渉術;巧妙な手口を、注意深く観察する

機転の利く相手は、聞かれたことに答えず、直接的な質問をうまく避けます。代わりに、彼らが質問されたかったことについて、答えるのです。

不運なことに、人はこのような曖昧さを検知する生まれつきの才能は持っていません。Todd Rogers氏と Michael Norton氏は、聞き手はたびたび、このような回避的な答えに気づかないことを、発見しました。最初に質問したことを、忘れてしまうのです。

事実、研究者たちは、人は、関連した回答であっても、説明の歯切れが悪い場合、雄弁で回避的な回答に、より感銘を受けることを発見しました。

聞き手が質問を覚えるようにすれば、回避の見極め能力は改善します。

例えば、話しての回答が視覚的に見える時です。

良い方法としては、相手の答えを書き留めるスペースと伴に、質問表を作成し交渉時のテーブルに置くのです。

あなたが探していた情報が提供されたか考えるため、回答を受けた後は時間を取ります。
質問に対する回答を受け取った時のみ、次のトピックに進むのです。

交渉術;機密であることを、くどくど話す

研究では、人はプライバシーや機密であることを保証すると言われるとき、むしろ、相手に対して疑念を抱く傾向にあります。そして、口を閉ざし、情報の共有を減らすのです。

1970年初め、米国学術研究会議はこのパラドックスについて調査を行い書面で記録として残しています。保証の約束をすればするほど、人は回答について消極的になったのです。

この試験結果は、下記の通りEleanor Singerらが行った研究により支持されました。
ある調査について、2つのグループに協力の同意を求めたのです。結果は、

◆機密情報について強い保証を約束された人の内、半分以下の人が、何も害のない調査に協力することに同意しました。

◆一方で、何の保証も与えられていない人の約75%が、調査に協力することに合意したのです。

また、Leslie John氏らは、強力なプライバシーの保護は逆にウソを増やすことを発見しました。加えて、カジュアルな口調で質問をした場合、真剣な口調に比べて、相手はセンシティブな質問を打ち明ける傾向にあったのです。

プライバシーや機密情報の保護については、相手に聞かれない限り、言う必要はないのです。

交渉術;情報開示を助長する

人は何気なしに、自分がする質問も含め、いろいろな方法で情報を漏らします。

例えば、あなたは購買部の責任者で、6カ月以内に製品を納品すると約束したサプライヤーとの契約書にサインをします。

サインの前に、もしサプライヤーがあなたに、納期の遅れが発生した場合どうなりますか?と聞いてきます。質問自体は無害ですが、この意図は、納期はサプライヤー側の懸念であるという、合図かもしれません。

人が情報をうっかり漏らしてしまう時、その情報は正確である傾向にあります。

鋭い交渉人はこう言います。

価値ある情報は、相手が話す言葉の全てを単に聞くだけで、集まります。見たからに無関係で、無造作なコメントであってもです。

これは、尋問者が犯罪容疑者に対して、公表されていな事実を含む陳述を探るためのやり方と同じです。

Leslie John氏らの実験では、人は、明確に情報を打ち明けるよりは、センシティブな行動の中で仕事における情報をうっかり漏らす傾向にあります。

ある研究で、ニューヨークタイムズの読者に、彼らの収入に関してウソを言うか調査を行いました。

様々な行動の倫理性を評価するため、一つのグループには、具体的な行動を示して、それらに関わったことがあるか、直接的な質問をしました。一方、他のグループには間接的な質問をしました。

結果;間接的な質問を受けたグループは、単刀直入に直接的な質問を受けたグループより、約1.5倍多く、不適切な行動をとったことがあると認めました。

交渉現場でも、あなたは情報を収集するために類似した間接的な戦術を使うかもしれません。

例えば、相手に利益をシェアするために2つの異なる案を与えて下さい。あなたにとっては、両方とも受け入れられる案です。

相手が2つの内、一方のものを好むようであれば、それは相手の優先順位を打ち明けており、あなたは、交渉における相手の相対的評価を見抜くことができるかもしれません。

相手がうっかり手の内を見せる他の戦略としては、相手が主張する財務的な結果に関して成功型報酬にするよう要求してください。

もし相手がそれに対して尻込みするようであれば、ウソをついている可能性があります。

考えて下さい、あなたが小さなベンチャー企業を買収する交渉をしている時、相手は楽観的な、あるいは達成不可能な売上予測を提出してきます。

あなたは、売上達成度に応じた買収額に関連する、成功報酬型の契約を提案するのです。これにより、相手のモチベーションを上げ、かつより現実的な売上予測を入手できるようになるでしょう。

そして、相手のウソから自分を守るのです。

私たちの周りにあるウソは、交渉中、価値の創造の障害となります。これが科学的に証明されたやり方を通して、ベストな結果を生む交渉に臨んでください。

最後までお読みいただきありがとうございました。