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【社員研修】効果を出すには

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充実した研修を提供する企業も増えてきました。外部委託や専門の講師を招いて丁寧に研修を行っています。莫大な費用がかかるので継続するには効果が目に見える形で、現れるのがベストです。

例えば、会社の風土が変わる、社員の覇気が上がる、知識が増える、意思決定スピードが上がる、革新的なアイデアが生まれるなど。

教育内容は業界や社員の役職で異なりますが、効果的な研修とはどのようなものなのでしょうか。費用をかければ、社員の能力を改善できるか、Havard Business Reviewの記事を参考に考えてみたいと思います。

社員研修の効果を出す3つのキー

✔学習の必要性の根本原因を探る

✔研修の目的や最終ゴールの設定

✔企業側のコミットメントを社員に提示する

入社後の社員研修

あるレポートによると、2017年、アメリカの企業は研修や能力開発に$90B(約9,900億円)以上を使用したと報告があります。しかも前期比で32.5%の増加となっています。

生き残るには、会社が変わらなければならない、会社が変わるには、社員が変わらなければならないということなのでしょう。

私が営業をやっていた頃、本社が提供する様々な研修に参加しました。マーケティングの担当者から製品研修を受けたり、トップ営業の人間から販売に向けたロールプレー実習、ロジカルシンキングの取得、分かりやすいプレゼンテーション手法などなどです。

研修後は、実際の現場で使用したり、更に勉強を続けて身に付けた考え方、知識を洗練させました。おかげで、私の能力は伸び、営業としてそれなりの成績も残せる結果となりました。

不足しているスキルを補うことが主目的だったため、効果も見えやすかったです。

企業の研修担当者が期待している、競争力のある社員、離職を抑え社員のつなぎ止め、忠誠心の向上が達成できた、まさに狙い通りの研修が行われたのだと思います。

一方、批判的な観点で言うと、結果が伴わないことで、これら研修にかける投資への無駄も実際には上げられます。研修は、時には効果的だが、時にはうまくいかないということです。

例えば、企業が新たな戦略、新市場への製品投入時は、研修は、社員がその戦略を実行し、成功するためのスキルや知識を身に着けさせる重要な役割を担いますが、研修に認識された目的や最終ゴールがない場合、失敗するリスクは増します。

個々の行動やスキル不足の改善が目的であれば、ある程度の研修で効果を見ることができますが、社内のシステムが問題で発生している場合はいくら研修をやっても効果が薄いというのが現状です。

効果のある研修

分かりやすい私の実際の経験をお話しします。とある10名ほどの企業にて、女性従業員の間でトラブルが発生しました。丁度帰社する前にオフィス外にあるお手洗いに行き、カバンを取りに再度オフィスに戻ったところ、すでに全員帰社し、鍵がかかっており、中に入れなかったというのです。

各従業員には鍵を渡してあるので、その従業員が鍵をもっていかなったというのが一つの原因ですが、彼女がお手洗いに行くのを分かりながら、帰社した社員(Aさん)がいると指摘しました。日ごろから、関係がよくなかったので、更に火がついた状況です。

その従業員は人事部に報告し、Aさんの日ごろの態度含め、意図的に嫌がらせを受けたと話しました。そこで人事部は外部コンサルを招き、対人問題解決研修のようなものを企画したのです。数回に渡る研修となっており、費用は100万円。

この研修は果たして効果的なのでしょうか?答えはNoです。一部コミュニケーションが問題なのはありますが、研修を行っても、再度同じようなことが発生するリスクがあります。

根本的な改善策としては、ドアを鍵タイプからパスワード入力やキーによりあけるタイプにすれば、同様のことは発生しません。それを実施した後に、研修を行えば効果的であると言えます。

企業の担当者たちは明確な学習機会の提供、スキルス不足を補う、行動を改善するため社員への研修は万能薬と考えていますが、その改善すべく根本的な原因の解明が最初の重要なステップとなります。

社内システムの改善

例えば、ある会社が企業研修コンサルの専門家に、ワークショップを通して二つの改善を依頼してきました。

  • 社員による官僚的文化の改善
  • 社員が、より起業家精神を抱く風土

その企業のゴールは

  • 取り組むべく課題に対して、彼らの上司の承認を待つのを止めさせる
  • 社員自ら意思決定を行うよう、権限を与えられたと感じるようにする

目標とするアウトプット

  • スピード感のある意思決定

その企業は何としても投資をしたいと考えていました。しかし、そのゴールを達成するための研修プログラムはうまく行かなかったのです。

研修は、学習の必要性の根本原因が未開発のスキルであったり、知識不足が決定的な証拠である場合には、協力な媒体となります。

こういった状況の中で、個々にカスタムされた内容と伴に、うまくデザインされたプログラム、関連商材、スキルを高める習慣やスキル取得の最終測定が入っている研修は、すばらしく機能します。

ただ、この企業の課題の場合、社員のスキル不足は大した要因ではありません。もう少し、担当者に詳細を確認したところ、次の根本原因が社内に見えてきました。

  • 非効率な意思決定プロセス;どのようにして意思決定がなされたのか曖昧
  • 限定的に割り振られた権限;トップ組織に集中し、新たなプロジェクトが立上げにくい
  • 社員が意思決定するための、測定可能な期待度がない;具体的な投資費用など
  • 意思決定を素早くするめに情報を素早く提供する技術がない;個人間のつながりが主

これら、社内システムの問題を考えると、研修プログラムを実施したとしても生産的、持続的なアウトカムを生むことはほぼありません。逆にマネジメントが実態を把握していない状況に陥り、大きな反感を生みます。

社員が研修を受けることで、その新たな知識が必要な場面に直面した時に、改善された行動を選択することはできます。しかし、その職場環境がその行動をサポートしなければ、研修を受けた社員は違いを見せることはありません。

つまり、研修の効果は見えないということです。

この場合に、研修プログラムの効果を出すには新たに求められている行動をサポートする社内システムの構築が必要となります。求められていない行動を見つけるのは間違いなく、何かを変えるためのヒントとなりますが、この企業の問題はスキル不足が原因ではない可能性が大きいです。

具体的には言うと

  • 明確な権限が与えられていない状況であるため、行動を起こすことができなかった
  • 会社の意思決定プロセスが、社員が最善のやり方で行動を起こすことを妨げた
  • 周到な意思決定も、最終的には複数の承認を必要とした
  • またマネジメントには限定的な情報しか伝わらず、それゆえ、何をするにも、まずは許可をとる文化が確立された

まずはこの社内システムが改善されないと、研修は機能しない可能性が高いです。

また、変化することへのコミットメントも必要です。組織アセスメントにより、スキル開発が必要な社員を特定するだけでなく、研修実施後にこれらスキルを強化し、維持することが重要となります。

求められていない行動を見つけることで、すぐに社員を変えられるという意味ではなく、企業側が変わるということを社員にコミットすることで行動に移ります。

研修を行い社員のモチベーションを上げる、根本原因の改善はこれから考えるという返答ではアウトカムは望めません。

企業が変わると社員が変わるは同時に進めるべき、課題なのでしょう。