日本では、出生率の低下による少子化が問題となっていますが、アメリカでも同様です。
若い世代が子供を育てることに対して、様々な価値観をもつようになりました。2017年の出生率(人口1,000人あたりの1年間の出生児数の割合)は1.765です。数字は低下の道をたどっています。
ちなみに日本の出生率は1.42(2018年)となり、更に深刻な状況です。
CDC(米疾病対策センター)にて、下記の情報が公表されています(2019年2月時点)。
- 出生者数: 3,791,712人
- 出生率: 女性1,000人あたり59.1人(年齢層 15-44歳)
- 低出生体重児: 8.3%
- 早産児: 10.0%
- 未婚率: 39.6%
- 初婚の平均年齢: 26.9歳
出生率は国の経済にも影響する大きな課題です。ここでは、アメリカの少子化問題に関する調査結果を見ていきたいと思います。(参考;ニューヨークタイムズの記事2018年7月5日)
考えられる出生率低下の主原因
✔お金と時間
✔男女平等の社会
✔人生における選択肢の増加
アメリカ低出生率の理由
以前に比べアメリカ人が生む子供の数が減少していることについて、研究者たちは、アメリカの景気後退が原因とみていました。しかし、経済が回復しても、その数は減り続けました。そして今、2年続けて最低数を更新したのです。
出生率の変化は、今日の多くの主要な問題を形成しています。それは、移民、教育、住居、労働者数、社会安全ネットや働く家族を支援するシステムなどの課題が上げられます。
若い世代が、多くの子供を作らないことは重要な課題のため、実際に聞きを取りを行いました。20‐45歳の1,858人の男女に聞き取りを行ったニューヨークタイムズモーニングコンサルトの調査結果になります。
質問;なぜ、若い世代たちは、自分の理想の数より少ない子供を持つのか?
子供の養育費用が高額 | 64% |
一人の子供により多くの時間を使いたい | 54% |
経済が心配 | 49% |
子供を多く持つ余裕がない | 44% |
経済が不安定のため | 43% |
余暇時間をもっと持ちたい | 42% |
家族休暇が十分ではない | 39% |
家族休暇が支払われない | 38% |
世界経済不安定の懸念 | 37% |
ワークライフバランスに苦難 | 36% |
国内の政治的懸念 | 36% |
パートナーに出会ったのが遅かった | 34% |
気候変動の懸念 | 33% |
他の家族の世話をする責任 | 29% |
人口増の懸念 | 27% |
自身の教育とキャリア形成が優先 | 23% |
パートナーとの別れ | 22% |
パートナーが子供を欲しがっていない | 19% |
自分のことをよい親だと思わない | 13% |
子供を持った、あるいは予定した言う回答者の1/4は、彼らが実際に欲しかった人数より、少ない数の子供を持ったと言っています。
また多くの回答者は、時間とお金の懸念から、子供を持つのを遅らせた、あるいは止めたとも言いました。
この調査での、最も包括的な理由のひとつは、少ない子供を持つ大人たちは、男女平等について、ある事実示しています。つまり、生活において女性は以前より決定権をもち、母親になることは、多くの選択肢の一つに過ぎなくなったということです。
しかし、経済の不安定の話しも上げられました。若い人は学生ローンを持っており、多くは不況時に卒業し、家を購入する余裕がなかったのです。
同時に親になることは、より高額であり女性は、特に、子供を持つと、子育てが理由で、高収入を得るのが難しくなるという現実があります。
ただ、出生率2%を超えている州もあります。
男女平等な社会が出生率を低下させる
メリーランド大学の社会学者であるPhilip Cohenさんは、それぞれの子供たちにより多くのお金、時間を投資したい。そして、不平等な環境が増す中で競争するための、一番の機会を子供たちに与えたいと話しています。
同時に、男女平等と出生間の関係は強いという事実があります。男女平等である国で、高い出生率を持つ国はないと、言うのです。確かに男女平等が強く意識されているヨーロッパ諸国を見ると、出生率は高くないですね。
アメリカの女性の大半は、まだ子供を抱えています。しかし、最も使用される出生の測定方法にて、出生適齢期の女性1,000人毎に対する出生数は、60.2と最も低い数字となりました(2017年)。
現在のパターンをベースに女性が生む子供の全出生率は1.8人まで減少しています。これは、先進国での人口置換レベルである2.1(人口が長期的に安定する出生率)を下回るという、数字です。
この結果、アメリカは低い出生率を持つ、他のほとんどの先進国と肩を並べたことになります。ちなみ、欧州諸国の2017年、平均出生率は1.589です。
以前は、多くのティーンネイジャーが妊娠したり、意図しない妊娠やヒスパニック移民の高出生が、アメリカの高い出生率の理由となっていました。
しかし、部分的な理由ではありますが、 IUDのようなバースコントロールの長期的な使用の増加により、これらの傾向は逆転しました。
この調査の対象となった男女20‐45歳の1,858人のうち半分以上は、彼らの両親より少ない子供を持つ予定であると回答しています。この内の半分はすでに子供を持つ親でした。子供がいない回答者の42%は子供が欲しかったと回答。24%は欲しくない、34%はまだ決まっていないと回答しました。
子供を持たない理由
質問;なぜ、若い大人たちは、子供を持たないのか。
余暇時間が欲しい | 36% |
パートナーが見つからない | 34% |
子供を養育する余裕がない | 31% |
子供を望まない | 30% |
家を購入する余裕がない | 24% |
いい親になれか分からない | 24% |
経済が心配 | 23% |
世界の不安定が心配 | 18% |
自分のキャリアがより優先 | 18% |
働き過ぎ | 14% |
人口増が心配 | 14% |
学生ローン多すぎる | 13% |
まだ学生 | 13% |
家族休暇手当が十分でない | 13% |
自身の健康問題 | 13% |
大学費用を支払う余裕がない | 11% |
気候変動の懸念 | 11% |
国内の政治的懸念 | 10% |
一番大きな要因の一つは、個人の問題です。子供を持つことを望まない、余暇時間がもっと欲しいなど。子供を持つことを計画しなかったと答えた1/4は、自分は良い両親にはなれないからと言っています。
26歳のJessica Boerさんは、子供を育てる時間ではく、むしろ彼女が使いたい時間の長いリスト表を持っています。
それは、彼女の家族や婚約者と一緒にいる、旅行する、彼女の仕事である看護師に注力する、修士学を取る、ペットの猫と遊ぶなどです。
彼女の親は高校卒業後に、すぐにJessicaを生みました。両親は大変、苦労されたと言っています。そして、Jessicaさんは言います、私たちは、選択肢を持っていると。
時間や経済的な問題というのは、想定していましたが、いい親になれない、気候変動、人口増が原因に上げられ、問題の複雑さ、深刻度がうかがえます。
子供をもつことが、必ずしも人生の幸福度を上げるものでなく、個人の価値観にフィットした人生が、より豊かな生活を送るのに、重要な指標になるのでしょう。
あとがき
子供を持ちたいと思う人の中で、お金が原因で中々踏み出せないという理由が上位にあることが分かりました。アメリカのような先進国でも、生活が豊かになっても、お金の不安というのはつきまとう訳です。
私の印象では、お金に余裕があり、子供が欲しいと願っている人は、2人以上の子供を養っています。価値観が多様化する中でも、家族を持つという幸せを本当にかけがえのないものなのでしょう。
子育ては苦労も多いですが、数十年後にベッドの中で人生を振り返るときに、たくさんの家族に見守られて、最後を過ごすことができたら、と考えると心が和んできます。
同時にパートナーと二人、家計を助ける財務的な柱を、若いうちから準備する大切さを改めて考えさせられました。
最後までお読みいただきありがとうございました。